2016年12月21日

雪雲や重ねる母の手の重さ

幼稚園ころの思い出は自分のものではなく、
両親の喧嘩の思い出である。
自宅を建設するために、近所の地主さんの離れを借りていた。
そこのお姉さんがよく遊んでくれたので、私はかなり懐いていたように記憶する。
何かの行き違いで頑固な父が母と喧嘩をし、
怒った母は部屋に鍵をかけて立てこもった。
鍵穴からみた母の背中はそれは寂しそうで、喧嘩もではあるが
きっと私がお姉さんに懐いたことも原因ではないかと
子供心にインプット。
いまだに鍵穴と母の背中はセットで思い出す。
もうひとつ、その数年後、たしか母の誕生日に半日母は私達を連れて、
家出をしたことがある。
遠い公園と母の掌はいまでも記憶にある。
頑固な父はいまではかなり優しくなり、
脳梗塞を患った母は父の言う通りにしか動かなくなった。
その両親の家の屋根には冬になると鷺が立つ。
庭にある池の巨大な鯉や巨大な金魚を狙っているらしい。
この鷺、家に近づいていくとまるで羅針盤のよう。
いまでも両親はかろうじて元気である。