2017年2月11日

蝶といふ言ひ放たれてきたことば

昨日、阿部青鞋の話をしましたが、高校のころに読んでいいなと思った作家の一人です。
あまりメジャーではないのですが、みなさんに知ってもらいたいので『火門集』(八幡船社、一九六八)の中から少しご紹介します。

〈宮﨑莉々香選10句〉

日の丸のある家だから出しておく

感動のけむりをあぐるトースター

虹のなかにしがない皮膚色をみつけ

物を読むごとくに靴の裏を見る

がらあきの林を蟻が通るなり

ぼくの家が五六の蜂に愛される

電線の影へこころをつめたくす

一生に一度のくちばしがほしい

つまり国よりも愛した歩兵銃

どこか寒し葡萄の種というものは

〈一生に一度のくちばしがほしい〉は特にすきな句です。イッショウ・イチド / クチバシ・ホシイという風に音も心地がいい。成りえないものへのあこがれが書かれています。ううむ、あと味が魅力的では。