蝶といふ言ひ放たれてきたことば
昨日、阿部青鞋の話をしましたが、高校のころに読んでいいなと思った作家の一人です。
あまりメジャーではないのですが、みなさんに知ってもらいたいので『火門集』(八幡船社、一九六八)の中から少しご紹介します。
〈宮﨑莉々香選10句〉
日の丸のある家だから出しておく
感動のけむりをあぐるトースター
虹のなかにしがない皮膚色をみつけ
物を読むごとくに靴の裏を見る
がらあきの林を蟻が通るなり
ぼくの家が五六の蜂に愛される
電線の影へこころをつめたくす
一生に一度のくちばしがほしい
つまり国よりも愛した歩兵銃
どこか寒し葡萄の種というものは
〈一生に一度のくちばしがほしい〉は特にすきな句です。イッショウ・イチド / クチバシ・ホシイという風に音も心地がいい。成りえないものへのあこがれが書かれています。ううむ、あと味が魅力的では。