2017年3月23日

野遊びや指輪を覚えようとする

同棲を始めて1年半ほどで私たちは結婚した。
式は挙げていない。二人で夜の町田市役所に婚姻届けを提出し、近くのお好み焼き屋で祝杯をあげた。それだけだった。結婚をしたと言っても生活に変化はなく、私は泊まり込みの勤務が多くて、ルームシェア婚とでも言うべき状況が続いた。

結婚を前にして、貯金が無いわけではなかったので、結婚指輪くらいはそれなりの物を買おうと思っていた。新宿の伊勢丹で彼女は「長く使うものだから」と言って、結構な数を念入りに試着し、私の指にも何度もはめて、惜しい点を挙げては店内をぐるぐる回った。結局、彼女が気に入ったのは、シンプルなホワイトゴールドの比較的安価なリングだった。理由は、微妙に違う二人の肌の色にもよく合っているからだと言って、私の目の前に指輪をはめた薬指を差し出した。私もそれにならって手を寄せて比べてみた。少し気恥ずかしかったが、彼女の言う通り、確かによく似合っていると思った。