2017年9月21日

ゆく秋の刺客キャッシュは足袋の底

●膜の世界●

かつて「エアロスペース」を作ったカザール・カーンは「軽くなることは美しくなること」と言いましたが、膜構造のパイオニアであるフライ・オットーもまた軽やかさを旨とする建築家です。

オットーが生涯こだわったのは、最小限の材料かつ最小限の力で空間を包むこと。造形が生まれる物理学的プロセスをそのまま見た目に活かした彼の建築は、当時この上なく不思議なものだったようです(今となっては見慣れすぎてなんの感慨も湧かないですけど)。さらに、それまで〈建築〉という概念から排除されていたテントや天幕を構造力学に取り入れたことの意味は大きく、壁や屋根自体が透光性をもつというのも革命的。窓もないのに光が差し込むって、本当にすごいことですものね。

上はピンク・フロイドの1977年全米ツアー用にデザインした野外会場の屋根(最初に彼が傘型屋根を発表したのは1955年)。下はシャボン玉をつかった、屋根の曲面設計のデモ動画なんですが、これがとってもおしゃれ。

この動画を見てから、ピンとこなかったオットーの作品の見方がわかるようになって、ぐっと視野が広がりました。よかった、よかった。