姥捨や金秋の刃をもちあるく
遺骨なき兄はいづこぞ慰霊の日 知念弘子
遺骨無き遺族の嘆き沖縄忌 赤田雨条
戦争展骨はもどらず野分して 喜舎場森日出
野ざらしの骨なお残る鬼餅寒 上江洲萬三郎
弔うべき死者の骨が返ってこない、手元にないということがあった。誰のものかわからない骨があたりに散乱した状況で。そもそも死んだのかもわからないわけであるから、弔いを留保して待つほかない。
蜩や摩文仁は骨をとり尽くさず 長谷川櫂
この句の「蜩」がもっている微かな抒情は、やはり気を付けておかねばならない。季語が抒情を持ってしまう。