2017年10月18日

姥捨や金秋の刃をもちあるく

遺骨なき兄はいづこぞ慰霊の日   知念弘子
遺骨無き遺族の嘆き沖縄忌     赤田雨条
戦争展骨はもどらず野分して   喜舎場森日出
野ざらしの骨なお残る鬼餅寒    上江洲萬三郎

弔うべき死者の骨が返ってこない、手元にないということがあった。誰のものかわからない骨があたりに散乱した状況で。そもそも死んだのかもわからないわけであるから、弔いを留保して待つほかない。

蜩や摩文仁は骨をとり尽くさず   長谷川櫂

この句の「蜩」がもっている微かな抒情は、やはり気を付けておかねばならない。季語が抒情を持ってしまう。