スピカ賞 受賞発表

受賞者 織田亮太朗

作品タイトル「まいにちがしつれん」

【受賞理由】

コンセプトや引用・観賞の独自性。恋愛というモノフォニックなテーマを、俳句をはじめとする複数の文学テキストを通してポリフォニックにメッセージを発信してゆくという手法に、可能性を感じた。自分の書きたいものに対して情熱をもって描こうとしている態度が、言葉を熱に変換している。提出された作品が、はじめの1週間分の作品ではなく日付指定の7日分であったところからも、連載全体を見通すビジョンを描くことができた。〈背景になりたし又は案山子にでも〉、自虐が諧謔へと脱皮してゆくカタルシスがある。背景から、案山子へ。一歩踏み出してもらいたい。

【選考過程より、抜粋】
神野:織田氏の〈背景になりたし又は案山子にでも〉という、自虐が諧謔へと快く脱皮するような俳句に、カタルシスを感じて、最終的に一位におしました。ずぶといですよね、背景じゃなかったら案山子で、と、少しポジションを前に押し出してきてる感じ。織田さんは俳句をまとめるちからがあるけど、やぶれかぶれでいいから、この一か月、うまくまとまろうとせずに、ホームランを目指して詠んでほしいです。

江渡:再度読んでみて、私は織田さんの熱量が結構好きなので、やっぱり条件つきでもいいので織田さん推しかなといった感じです。もちろんまだ甘いなと思う箇所もあるのだけれど、自分の書きたいものに対して情熱をもって描こうとしている人の作品を選びたい。その点においては織田さんが一番伝わった。感情論ですけど。

野口:次席の作品の安定感が逆に順当すぎるのでは?というところなのでしょうか……。たしかに、織田作品のほうが、スピカっぽくない感じ(スピカっぽさというものがあるとするなら)で、私たちが依頼する作品とは違うテイストが出るのかもしれませんね。私も織田作品に票は入れています。自虐のクセの強さと俳句鑑賞を織りなす織田作品は、《俳句は人を癒せるか?》ということがテーマなのかも。

【編集部より】
今回のスピカ賞への応募総数、24通でした。

運営3人が各自すべての応募作品を読み、吟味・検討したうえで、上位3作品を提示するところから選考をはじめ、最終的に、上記の理由で織田亮太朗さんの受賞を決定、11月の連載を快くお引き受けいただきました。
具体的な俳句やアイディアを取り上げた選考経過を公表すると、ご応募いただいた句が既発表になることなども考慮し、選考経過は公開しない前提で、応募要項をまとめ選考を進めました。ただし、応募者のみなさまへは応募作品への回答として選考経過をお伝えしたく、連載開始の11月1日を目指して選考経過をまとめ、上記の内容も含めたもう少し詳しい選考結果を、11月8日付でお送りさせていただきました。

ご応募くださったみなさま、本当にありがとうございました!

(追記)
連載前に選考理由を発表すると、ネタバレも含め連載を意味づけてしまうと考え、11月最終日に受賞理由発表の予定で進めていましたが、11月8日記事の織田氏の謝罪を受け、スピカ運営からも不適切な表現の掲載についてお詫び申し上げると同時に、織田氏の推薦理由をご説明したく記事をまとめました。自虐のクセの強さと俳句鑑賞が織りなす織田作品。背景から案山子へと一歩踏み出した織田さんの今後の記事を、運営として楽しみにしております。今後も、よりよい誌面づくりにつとめてまいります。至らぬ点が多く、恐縮するばかりですけれども、どうぞよろしくお願いいたします。