大音響を出すのみの機械夏寒の
暴力描写の多い作品があまり好きではないので、大藪春彦もほとんど読んでいない。
『俺に墓はいらない』でも、主人公の侵入に驚いて飛び出してきた名もない警備員までが、全員身体障害者になるほど手ひどく無造作に痛めつけられている。
残虐趣味というよりは、「力」の絶対性に引きつけられてのことだろう。
この作品には途轍もない大音響を発して、タフな主人公にさえ気分を悪くさせるような機械というのもチラッとだが出てきていた。
古本の角川文庫版は、平岡正明の解説がよかった。
戦後の混乱を生き抜いてきた作者という観点から、いかにも暴力的なシーンからではなく、一見些細な描写から、己の身を守るための緊張とそれに対する用心とをつねに強いられてきた痕跡を読み取っていたのである。
圧倒的な力への一体化は、単に空疎な妄想として出てきているわけではないのだ。
ところで、大藪春彦と横溝正史は角川文庫の古本が出たときでも、状態のいいものがなぜか極端に少なく、あまり買う機会がない。
この辺、作風と何か関係があるのだろうか?
