2012年1月8日

震災以後戦火の記録を読めば 火

『漱石先生雑記帳』は百閒の随筆のうち、師漱石に関するものをまとめた薄い本だったが、印象的なエピソードがひとつ。
漱石が執筆の徒然に自分の鼻毛を植えつけた原稿用紙というものがあり、百閒はそれをもらいうけて秘蔵していたというのである。
この貴重なのか何なのかよくわからない鼻毛付き原稿用紙は、昭和20年の空襲で失われてしまったという。

戦争は悲惨である。


*内田百閒『漱石先生雑記帳』河出文庫・1986年