ポインセチア(中略)泣いてゐる女   加藤静夫

女が泣いている理由も、場所も時間も、略されてしかるべきことのようだ。
この世界に「ポインセチア」と「泣いてゐる女」が存在する、ただそれだけでいいのだ。
このようなややもすれば独善的な作者の構図設定があるにもかかわらず、
「(中略)」という言葉によって、読者は他の事が余計に気がかりになってしまう仕掛けが面白い。
季語が動く、とか、言葉をもっと練ることができる、とか、そういうことではなく、そういうもの、なのだ。

諸家自選五句(『俳句年鑑 2012年版』角川学芸出版、2011)より。