地・水・火・風・空みな荒れし年の焚火かな
この本、のちに『支店長の遺書―憤死』と改題されて角川文庫、集英社文庫、光文社文庫、徳間文庫から順番に復刊されたらしいのだが、最初のカッパ・ノベルズ版が表紙、タイトルともインパクトがある。
最近入手して読んでみたら、なんと私の住んでいる土浦も作品の舞台になっていた。
城跡を公園にした亀城公園というのがあるのだが、その周辺の描写を見るに、清水一行は実際にこの辺まで取材に来て歩き回ったらしい。
事件にかかわる銀行のモデルとされたのは、位置関係からするに、公園の真向かいにある「常陽銀行」ではなく、駅の方向へとやや離れた、当時の「関東銀行」あたりではないかと思うのだが、さすがに殺人事件が起こる話に実名そのままで登場させるわけにはいかないので、「筑波銀行」なる架空の行名にしてあった。
当時、銀行というのは役所と同じで潰れるものではないと思われていたので、作品上の処理としてはこれでよかったはずなのだ。
ところがそれから30年後の現在、銀行も合併と行名変更を繰り返すのが当たり前となり、当時の「関東銀行」はなんと「筑波銀行」になってしまった。
街は寂れ、作者は物故し、実在の行名も消滅し、後には架空だったはずの行名だけが残ったのである。
