2012年1月15日

洞窟に冷え抱きあへり生くるべし

先日鎌倉ハムを食べていて『盲獣』を思い出したが、所蔵している講談社江戸川乱歩推理文庫版(天野喜孝装幀の金色の叢書)が表紙をスキャンしないまま自宅で所在不明になっている上(震災で雨漏りするようになってから今でも本の大半が所在不明である)、ネット上にもいい画像がなかったので『孤島の鬼』に替えた。
この春陽堂版は多賀新の表紙もおどろおどろしく、活字がやたら大きすぎなくて古色と落ち着きを帯びているのもよい。

中身はいわずと知れた傑作だが、句は村越化石の「除夜の湯に肌触れあへり生くるべし」ほとんどそのままで、今回はっきり言って手抜きである。

なお念のために付言しておくと、洞窟の暗がりに迷い込んでいるのは青年同士である。


*江戸川乱歩『孤島の鬼』春陽堂・江戸川乱歩文庫・1987年