2012年6月23日

水槽のエビが共食い熱帯夜

(承前)
僕は、英語を勉強しに行く、という建前でスウェーデンに来たのだが、今までの自分と日本語との密接な関係に改めて気付かされることが多い。

たとえば、日本語の「疲れ果てて昨日はそのまま寝た」というフレーズを英語で「went to sleep directly yesterday」と言っても意味が通じない。「そのまま」という部分の言い換えとして、風呂に入らなかった、という情報をきちんと詳述しなければならない。構造も違うから、同じアルファベットを使用しているドイツ語やフランス語話者と会話のスピードがどうしても劣ってしまう。

そして、僕は省略しても通じる、話し言葉としての日本語がより好きになってしまったのだ。さすがに「この馥郁たる香り!」などとは日常的には言わないが、日本語の持つ多様な表現が前にも増して楽しい。もちろん、それは英語を勉強しない言い訳にはならないし、後ろ向きな構えではない。本当は、両者を比較することで英語の面白さにもどんどん気づいていきたい。ただそれは、今の僕にとってとても難しいことなのだけれど。

しかし、日本語を好きになっても、日本が国力を失うことで、その日本語を使う人間の数や機会がどんどん狭まってしまうのは都合が悪い。日本語で俳句をやっている以上、日本語を捨てて英語を勉強し続けるという選択肢は取れないし取るつもりはない。いささかわがままであるが、以上の理由から、日本を支えている人には、より一層の努力をしてほしい。