「ハンカチ」に透かしてみることによって、透かされた対象はキャンバスの中に納まったかのようだ。
ふつうなら、ハンカチ一枚隔てていることを防備している状態と見るかもしれないが、
ハンカチに透かされてしまうくらいの「無防備」、ハンカチの中に納まってしまうこと自体の「無防備」。
そして、ありとあらゆるものをハンカチ越しに見てフフフと楽しんでいるひと自身、
対象から見れば、ハンカチに透けて見えていて、「無防備」に違いない。
その構図が、「都市」が赤く崩れていくようなイメージと重なって、乾いたかなしさがある。
『現代俳句文庫 中村和弘句集』(ふらんす堂、2009)より。