ユニクロへ駆け込む兎聖書抱え
四国の実家に帰った時、
実家の近くに住んでいる祖父が野兎を捕まえたと聞いた。
足腰も覚束ない祖父がどうしたことかと聞いてみれば、
大昔に仕掛けた罠にかかったということらしく、納得。
しかも驚くことに、捕まえた兎を捌いて兎汁にするのだと息を巻いている。
養蚕室の隣の倉庫の軒に、両脚を縛られ吊るされ、
生ぬるい風の中でぶらぶらと血抜きをされる兎。
残酷な風景だが、祖父に活力が湧いていることは嬉しかった。
しかし、兎を調理する気は遂に起こらなかったらしい。
数週間経ってから、兎の脚が重力に耐えかねて、
兎は地面に落ちていたと電話で伝え聞いた。
以下、兎の登場する句をいくつか。
大寒や兎は菜屑こぼしつづけ 加藤かな文
朴の葉をいちまい噛みて兎罠 木内彰志
撃たれし血口に含みて兎死す 野見山朱鳥
野兎の糞岩を掴みてたしかめぬ 長谷川かな女