秋風のとびら隅々まで指紋
閃光に驚いて目を開けた。カメラのレンズが目の前にあった。
「ギャッ」と叫んだら、カメラも「ギャッ」と叫んで飛び退いた。
「生きてた……」
と、カメラを持った女性は言った。
「どこから入ってきたんですか」
「ドアから」
「鍵……」
「あいてた」
ドアを確認すると、鍵はたしかに壊れていた。回してもかんぬきの部分が出てこない。
「引っ越したほうがいいわね」
そのひとは高橋有子と名乗った。
高橋さんの顔には見覚えがあった。商店街のフルーツパーラーで年配の男性とパフェを食べていたひとだ。真ん中で分けたボブヘア、切れ長の目元。年齢のわかりにくい顔だけど、たぶん三十代半ば。オレンジ色のセーターとタイトなジーンズはほとんど汚れていない。薄く化粧してる。こんな状況であるにもかかわらず。
高橋さんはデジカメのプレビュー画面をわたしに見せて「すごいでしょう」と言った。街を徘徊する死体たちが写ってた。
高橋さんはラブホテルを住処にしていると言う。「一緒に来る?」と聞かれたので、ついていくことにした。