2012年1・2・3月 第九回 インターネット×俳句について 1

上田信治×西原天気×江渡華子×神野紗希×野口る理

神野  年鑑の話なんですけど、鼎談でインターネットの話が出ていて。小川軽舟さんが「インターネットの媒体は若い人に文章を書く機会をふんだんに与えてくれるので、彼らは文章はうまいですよ。そして俳句をよく読んでいます。ものを書くのはいちばん勉強になるじゃないですか。書くために読むのと、ただ読んだのでは全然違います。そういう鍛えられ方をしていると思いますね」というんですが、でも最終的に対馬康子さんが「ネットの場合は情報の垂れ流しといいますか文章にしてもどんどん書いて、どんどん画面から消えている。そういうところでは危うさみたいなものを感じました」と言うのを受けて、西村和子さんが「もったいない感じもしますね。それだけ皆さんが文章を書いているんだったら」と言うんです。

野口  でも、ネットのほうが読めると思うんですけどね。結社誌って手に入らないし読めないじゃないですか。

西原  そう、ネットって何年も前の記事に、瞬時でアクセスできるんですよ。そのへんのことを知ってか知らずか、「ネットの記事は消えてなくなる」と、簡単に片づけるひとが多い。これって、この数年繰り返されていて、困ったものです。

上田  アーカイブで全部残ってるんですもんね。そして検索すると、意外なところから出てくるじゃないですか。キーワード二ついれて引っかかってくるっていうのがすごい使いでがあって。

西原  対して、結社誌はどこで読めるんだ?という。

神野  そう。結社誌をデータベース化してもらえない限りは、それこそ情報の垂れ流しですよ。

西原  結社誌・同人誌には、悪い意味ではなくて、会員同士の回覧板という機能がある。その意味では残らなくてもいい。でも、そこに、誰が読んでも面白いような記事があったら、ちょっともったいない。

野口  だからこそ、結社に入らないとそれが読めないよっていう売りにもなっていくのかもしれないですね。結社という制度を守り高めるために。

神野  ほほー、なるほど。

上田  まぁそうなんだけど、言論って本質的にパブリックなものじゃないですか。

神野  だからほんとは、それが国会図書館に所蔵されると一番いいんでしょうけれどね。

西原  たとえば「豈weekly」は、すでに更新は終わっていて、ウェブマガジンとしては終刊していますが、今でもいつでも誰でも読める。アーカイブとしてはりっぱに生きている。ネット記事はどれも基本的にそう。これは「フロー」ではなく、きわめて「ストック」的な情報です。ある意味、紙の雑誌のほうがフロー的。

上田  雑誌って、なかなか手元に残らないですよね。まあいるだろう、ってところは破って取っときますけどね。でもそれ以外のところだとずっとは取っておけないですものね。

西原  そう、ネットのほうがストック。それは重々わかっているのに、ついつい、いい加減なことも書いてしまう(笑)。

 

神野  だから、ネットで失敗すると恥ずかしい結果が後々まで残っちゃう。(笑)…しかし、こういうことをネットで書いても、ネットでこの記事を読んでいるひとはもう分かっているから、ほんとはこうしたことを、紙の上で言う機会があれば一番いいんですけどね。

上田  十分若いんだけどね、この鼎談のひとたちも。

西原  若さとは関係ないんでしょうね。

野口  結社の主宰や編集長という立場もあっての発言なのかもしれませんね。あと、誰でもアクセスできるものじゃなくて、ひと手間かけたものにあるプレミアム感、とか。

上田  でも、多くのひとに読まれたほうが幸せでしょう。

西原  有料/無料ということも関連があるかもしれない。誰でもアクセスできるっていうことと無料ってことは、セットだから。逆に、アクセス不可と有料は、セット。

神野  たとえば週刊俳句の有料ページみたいなのを考えたことはないんですか?

野口  つづきを読むには会員登録が必要です、みたいな。(笑)

西原  ない。

上田  まったくないですねぇ。

西原  有料化したら、運営の負荷がものすごく増えて、続かない。まず、原稿料が発生します。それからコスト管理、顧客管理、そういうもろもろの業務が4人でできるわけがない。今なにをやってるかっていったら、みんなの時間を持ち寄って「週刊俳句」が成り立っている。まあ、それって本当はコストなんだけどね。ある人を一時間雇おうと思ったらどれだけかかるかという意味で。でも、そこは、みなさんが無償で時間を持ち寄るということで週俳は成立しているわけです。そこは他の俳句ウェブと違うところかもしれない。例えば他は、3人でやろうか、ってはじめる。週刊俳句は、「みんなで時間とアイデアと見識を持ち寄りましょうよ」と呼びかけてスタートし、今でも、それは変わっていない。

上田  だから「自分で面白くするの禁止」って。

西原  禁止ってことではないんだけど(笑)、自分たちで面白くしようとしたら続かないでしょう。それに、読んで面白くないっていう人がいたなら、「それならあなたが面白いのを書いてください」といえる。これはかなり好都合(笑)。

野口  たとえば、週刊俳句に、あきらかに面白くない原稿がきたらどうするんですか?

上田  それは、薄目で見つつ載せる。(笑)あ、でも、ダメな原稿とつまらない原稿って違うんですよ。載せちゃダメな原稿は載せないです。

西原  あんまりなかったけどね。若干あるかな。

江渡  お断りしたこともあるんですね。

西原  個人攻撃と自分の愚痴を書いてるだけの原稿はNGですね。でも、これまでほとんど掲載です。「週刊俳句」の記事、全部が全部、読んで面白いわけでもないでしょう?(笑)

野口  まあ、全部とは言い難いですねぇ。

上田  面白いものを、っていうのは大変ですからね。

西原  寄稿を運営側が選別するのは、いろんな意味で難しいし、する必要もない。紙媒体とちがって、掲載料に制限があるわけでもないから。

上田  「スピカ」は頑張ってるよね。

神野  わたしたちには、先に「週刊俳句」が存在していたので。週刊俳句と同じではいけないから、どうするか、っていうのはやっぱり考えましたね。

上田  週単位ではなく、バラバラな日にいろんな記事があがってるっていうのがすごい。

野口  でも、ついていけないってよく言われます。週刊俳句の日曜更新、っていうのは分かりやすいですよね。

(次回も、ネットの話ひきつづき。)