紫陽花に住み貧乏を知らざりき   野口る理

掲句と俳コレの数句を取り上げて、西原天気さんはる理さんの個性を「姫キャラ」という言葉で表現した。
天気さんは文体というよりも素材に着目してこの言葉を用いているけれど、文体においてもる理さんの句にはどこか浮世離れした優雅さが存在する。
貧乏に匂ひありけり立葵   小澤實
僕にとって貧乏といえばこの句だが、この句は読者に共感を呼ぶタイプの俳句であり、それが魅力となっている。逆に、る理さんの俳句には、共感を求めるというより独白に近いような響きがある。それが前回書いた「制御性」にもつながるところはあると思うけれど、る理さんの句は作者の内部で完結し、読者はそれを箱庭を眺めるように見るほかない。それは物語性とはまた少し違う。そこのところを次に書くことにしようと思う。

「彼女」(2013.07)より