塩味の饅頭食べてをれば雹  神尾季羊

何かを食べていたら何かが起きたという形は、正岡子規の「柿食へば鐘が鳴るなり法隆寺」と同じパターンだが、その二者のチョイスが面白い。夏の暑い時期に塩分のある甘みがおいしいなあと思いながらいたら、バラバラバラと雹が降ってきたという偶然性の喜びのように見え、塩味の饅頭と雹とは直接的に関係はなさそうだが、実際には、暑い夏に降る冷たい雹と、甘いお饅頭を味付けするしょっぱい塩というどちらも意外性に強く訴えかける点で、ちょっと似ている。

櫂未知子著『食の一句』(ふらんす堂・2005年7月)より。『季語別 神尾季羊句集』所収の句。