初夏の豆腐にしみる醤油かな  東直子

冷奴。そして「しみる」の感じは、ぜったい木綿豆腐だ。夏の訪れとともに食べたくなる冷奴の登場の涼やかさに加えて、「しみる」という動詞の妙なセンチメンタリズムにキュンとくる。

同人誌「鏡」第9号(2013年7月)より。同作者の「魚へんの名を持つこども虹あがる」「夏めくやフォークは床に二度あたる」も惹かれた。魚へんの名って、なんだろう。「虹あがる」は「雨あがる」を連想するので、魚のぬめぬめと雨や虹の水気が引き合う。子どもだから、ちょっと理解できない行動もとる、その感じを「魚」に託している風もある。二句目は、フォークを落としたときの感覚だろう。こん、こん、と二回床に音を立ててから静かになる、といわれればたしかにそんな気がする。「あたる」は少し雑な気もするが、床にフォークの落ちた硬質な音と、フォークの硬質な光とが、夏の到来をしいんと告げている。