春の鳥双眼鏡に一つかな   永田耕衣

双眼鏡なので、それぞれのレンズが鳥を映して、実際には二つの鳥の像があるはずなのだけれど、双眼鏡を覗き込むと、それがひとつに重なって、ひとつの鳥に見えるわけだ。「に一つかな」というまとめ方がにくい。ある一点、一羽の鳥をじっと双眼鏡でおっているという集中も感じる。春の鳥は、「鳥交る」という季語もあり、生命力にあふれている。そんなエナジーあふれる春の鳥を双眼鏡でのぞき見ることは、快い刺激、興奮をもたらすだろう。

   

第三句集『與奪鈔』(昭和35年・琴座俳句会)より。昭和14年、まだ耕衣が耕衣になるまでの、いろいろな結社を渡り歩いていたころだ。

  

俳誌「澤」は、毎年夏に、まるで総合誌の企画のような特集号を出すので、毎年楽しみにしている。今年は「永田耕衣特集」。私も「耕衣と新興俳句」というテーマで、一本寄稿している。「新興俳句が嫌いだ」と公言していた耕衣だったが、実際は、結構新興俳句系の雑誌に投句していて面白いのだ。8月号なのでまだ刊行されていないが、特集号は「澤」の会員でなくても購入できるそうだ。お問い合わせは澤俳句会まで。

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