群に入る目高素早く幸福に  金子兜太

一群に加わった目高は、もうどれがそれだかわからないほどに、群れと一体になる。〈私〉が〈私たち〉になる幸福感。私は、大縄跳びで、すでに数人が縄の中で跳び続けているところに、縄の外からうまく加わることができたときの嬉しさを思い出した。「幸せ」というより、「幸福」といったほうが、真理に近づく。

第一句集『少年』所収。

ふらんす堂の百句他解シリーズの第一弾、『金子兜太×池田澄子』(2011年4月)から引いた。金子兜太の作品を、池田澄子が100句選んで、一句ずつ俎上に挙げながら語り合う、座談形式の本だ。「百句他解」という言葉は初めて聞いたが、自句自解と鑑賞を一冊で楽しめるのだから面白い。

掲句について、「これは池田君でないと選んでもらえないな。誰も選んでる人いないと思うな」と金子氏。100句という句数だからこそ、選者の選の独創性が実現できるのかもしれない。10句、20句程度では、人口に膾炙している句を挙げるだけで、すでに残席がなくなってしまうだろう。それにしても、一日で収録されたというこの座談。タフな二人だ。さすがに、後ろの方になってくると、一句に対する分量で、掛け足になってきているところも、臨場感があった。第二弾は、『後藤比奈夫×中原道夫』。こちらももうすぐ読了。

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