秋の野にゐてポケットのある不便  佐藤文香

まっすぐでわかりやすい恋心だ。通常ポケットとは日常を便利にするためについているもので、不便というのなら、その服を着なければいいのだ。けれども、ポケットのついている服を着ている。それは、普段作者もポケットを便利と思って使っているからだ。しかし、今、ポケットが不便になる状態にある。それは、寒いから手をつなぎたいという状況だろうと思う。。秋の野に風がよくふいて、少し寒い。手を握って欲しいが、ポケットに入れればすむ話で終わるものでもあるので、ポケットが煩わしい。悶々としている状態が可愛く、早くにぎってあげなよ!と、隣にいる男に言いたくなってしまう。

句集『海草標本』(2008年6月 ふらんす堂)より。