北斎のようにダイナミックな構図の一句だ。手前に蝉の木、そのうしろはすべて夕茜。「うしろ一切」という大胆な表現でデフォルメされた世界が、荘厳な生と死のドラマを象徴的に見せてくれる。
「南風」2014年11月号より。今年の夏に山上樹実雄主宰が亡くなられたが、そのあとを津川絵理子・村上鞆彦両氏が主宰として引き継ぐこととなったと知らせている。若い主宰が誕生した。私は伝統から遠い場所で俳句を続けてきたが、だからこそ、伝統がいかに引き継がれてゆくのかに興味を惹かれる。
同時発表作の〈蟬鳴いて少年にありあまる午後〉、蝉が短い命の象徴であることを踏まえると、少年老い易く学成り難しの一節が思い浮かぶ。