新興・前衛俳句の旗手として知られる赤黄男は、愛媛県の南、保内町(現在の八幡浜市)の出身だった。彼の原風景には、蜜柑があった。「蝶はまさに「蝶」であるが、「その蝶」ではない」という赤黄男の言は、いわば読者の姿勢や捉え方を問うもので、この句の蜜柑はやはり「その蜜柑」ではなく「蜜柑」(個別性より普遍性を目指している)なのだが、しかしまた「その蜜柑」から詠まれたものでもあるということもまた、創作者としては大切にしたい一点である。
「白ければ」が句の要点。雲が白いのを契機に、蜜柑をむく。パッとはじける蜜柑の汁が、鋭く爽やかに少年をとらえる。
第一句集『天の狼』より。