なんともけだるく、それでいて繊細な情景だ。
「晩秋のホテル」独特の居心地、グラスの中に残った「水」。
時間の経過があるはずなのに、もうずっとそこにとどまっているような雰囲気があるのは、
句またがりに切れる文体と、「晩秋」という季節感に醸し出されるものであろう。
「ホテル」「水」というものしか出てこないからこそ、人の気配が強く香る。
語らないからこそ物語があり、読者もその世界に立つことができるのだ。
第33回現代俳句新人賞受賞作「微熱」(『現代俳句 10月号』現代俳句協会、2015)より。