色々な緑の匂ふ冬菜畑  小野あらた

ほかの季節に比べても、冬の畑は緑だ。トマトもない、花も咲かない。
それにつけても、この把握の雑さ。「色々な緑」という雑さ。
寒い中で冬の畑をぼーっと見つめている主体の心が、その雑さによって掬い取られている。丁寧に緻密に描写すればいいってもんじゃないのだ。この句は、ぼんやり本質を突くということのむつかしさを軽く飛び越えている。

あとは「匂ふ」がポイントなのかな。冬だからそんなに匂わないと思うけど、なんとなく、命の気配がするのが「匂ふ」なのかな。視覚にとどまらないで嗅覚ももってきたところで、「色々な緑」という大雑把な把握を、きゅっと詩にひねりあげている。

「群青」2016年2月号より。