交差点からあをぎりが生えてゐる  鴇田智哉

交差点「に」ではなく「から」によって出現する奇妙な世界。交差点に梧桐が立っている、夏の普通の風景を思いつつ、交差点という言葉の象徴性-別々の二つの道が交差する場所-を無視することもできない。
「あをぎり」という木の、すらりとしたニョキニョキ感とか、夏の風を涼しくまとっている感じが、どこからかこの交差点に集まって湧いてくる、気のようなものを感じさせている。

冊子「第六回田中裕明賞」(ふらんす堂 2016年2月)収録の句会より。毎年分厚くなる冊子に、若手の層の厚さを実感する。
個人的にツボだったのは、受賞作・鴇田智哉『凧と円柱』にまつわる、選考会の以下のくだり。

石田  分かんない句をもうひとつ言っときます。「中日の二つの点のひらきかな」まったく分からなかったです。分かってる人に教えてほしいです(笑)。

小川  分かんないですね(笑)。

岸本  これ中日ドラゴンズかなと思ったんですけど(笑)。点がひらいて、とか。