闇鍋のどの具も紙の味がする   青本柚紀

〈紙の味〉というのが絶妙だ。しかも〈どの具も〉あまねく風味がついているという。
美味しくはないが、食べられないほど不味いというわけでもない。
〈闇鍋〉というスリルや期待感に対し、なんだか間が抜けている。
結構おいしい!とも、意外とふつう!とも、こんなの食べられない!とも言えない味。紙の味。
〈闇〉と〈紙〉の一字違いが織りなす、明暗、乾湿、抑揚があらわれている。

『群青 2月号』(群青俳句会、2016)より。

第145回勉強会【私の思う現代の俳句150句】