何も怖くない夏の野は草の波 江渡華子

 夏野の広大さは、不意に恐ろしいものとして見えるだろう。鋭く高い草が猛々しく風に吹かれたりしていれば、まるで何かの鬣のようだ。
 しかし、ミクロな着眼で見れば、それは穏やかなのだ。どれだけ猛ろうとも草で、そして、波立っている。子細な風景から、真逆の印象を引き出す。
「何も怖くない」という呼びかけは子どもに向けられたものだろう。優しく教えるまなざしが、そこにある。

(2015-7 草の波)