吾にほたり土にほたりと柿の花   嵯峨根鈴子

〈柿の花〉は、香りはあまりなく、若葉にまぎれあまり目立たない黄味がかった白い花だ。
雄花は小さなものがかたまって咲くが、雌花は単体ですこし大きくひらく。
〈ほたり〉という音、リフレインが、なんともあたたかくさみしい。
〈吾〉に〈土〉に落ちるこの地味な花への優しさが感じられるとともに、
地味な花にひっそりと浸食されるように降られている〈吾〉や〈土〉も見えてくるようだ。

『ラストシーン』(邑書林、2016)より。