いい間取図

2016.6.25角川書店刊行
広渡敬雄句集『間取図』より。

たくさん句会出てるんでしょう?

とよく言われるけど、全然そうでもない、本当に。

二つのメール句会を入れて、多くて句会は五回まで。それ以上はなんだか調子が悪くなる(僕はね)のでやらないようにしています。

今日読む句集の作者の広渡敬雄さんとは句会を一つご一緒させていただいています。見覚えのある句がちらちらあって、嬉しい気持ちになりました。

ではさっそく。

裏山にこゑ吸はれゆく鬼やらひ

裏山のある、鬼やらひ。

骨格の大きな人や青あらし

いる、そんな人。

中年やワインゼリーのよく冷えて

中年は、中年でいいもんです、と楽しそうな声が聞こえてくる。

裏返りつつ沢蟹の遡る

前半の一番好きな句。きらきらと小さな光のような沢蟹。動きが見えてくる。

夕顔ややはらかく割く烏賊の腸

ぬるん。

観音と暮らす百戸や冬支度

隠れ里みたいな。近江ですかね。

演台に残るマイクや夏の月

イベントの後は。

はるかより山羊の匂ひや秋の空

山羊を感じて。秋空が美しい日。

父の日やナイターの芝眼に沁みて

オヤジな句、味のある句。

包帯の白の粗さや蝶の昼

白にも色々、粗さが巧い。

間取図に手書きの出窓夏の山

人生を楽しむべし。

絡み合ふ鱧の眼や祭来る

西には鱧がある、それだけでも羨ましい。

ばしばしと鹿わたりゆく雪解川

ばしばしが良いですね、頑張れ鹿。

ざりがにのバケツの音と初恋と

少年の日よ。

小さくも龍太の川の雪解かな

小さくて大きな。好きな句です。

水捨つや金魚ぎりぎり片寄せて

これも好き。金魚がわわわと驚いているようで良い。

風呂敷の折り目美し山に雪

うつくしい国。

手毬唄地べた少なくなりにけり

近頃は。

寒鯉の重たくなりて浮かび来る

ふーぅ。

箸置きに箸休ませて春の月

余裕が気持ちの良い句。春の月が楽しそうに浮かんでいます。

楽しい句集でした。ぜひ読んでみて下さい。

じゃ

ばーい