球をなす満天の星に覗きこまれるようにして、死を迎える兜虫。守られているようでもあり、自然の摂理の厳しさをつき付けられているようでもある。兜虫の黒くつやつやした体に、まるで星空が映りこんでいるような、そんな光景を想像した。本当はありえない、童話のような光景だが、俳句のなかでは、それも真実。兜虫の死が荘厳されている。
今井豊の第四句集『草魂』(角川書店 2011年3月)より。
そのほかに「少年のあと少女踏むうす氷」「手術成功大白鳥の来る夢」「組み立てて函さへづりにさつと置く」「白雲や玉虫拾ふ兄を妬し」。