2011年8月2日

虹消えて山に山童川に川童  

 

ヤマワロは山中にあらわれる小童姿の妖怪で、好んで山仕事の手伝いなどをするといい、河童に似た存在、とされる。熊本県ではガラッパが秋の彼岸に山に入って山童となり、春の彼岸に川に入ってガラッパになる、といい、宮崎県のセコは夕方になると山に入り、明け方に山から川へ帰る、とされている。和歌山県でも川にいるのがゴーライ、山にいるのがカシャンボというそうだ。

同じような性質の妖怪も地方によって呼び名が変わる。「カッパ」も、本来は関東地方に限られた名称で、九州の河童的妖怪には「ガラッパ」「ガータロ」「ガッコ」「エンコーサン」「ヒョースベ」「ヒョスンボ」などの呼び名がある。「河童(川童)」「山童」と総称してしまうのは近代以降にひろまったことで、つまり好事家、研究者たちの仕事によるところが大きい。ところが現在では地方でも「この地方の河童は……」といった解説がされる場合が多く、姿形、性質も「カッパ」に統合されているようだ。妖怪は、時代によって変化していくものでもある。

 

参考.村上健司『妖怪事典』(毎日新聞社、2000)、大野芳『河童よ、きみは誰なのだ かっぱ村村長のフィールドノート』(中公新書、2000)