世界古図分けて左右の屏風かな   天野小石

二枚の屏風に分けて描かれた世界地図は、屏風間の断絶を経て、しかしひとつの世界である。この屏風のあわいの空間を埋めるともなく、美しき対称(あるいは非対称)をただ見つめていると、静謐で厳かな心地が底の方から湧いてくる。

 

第一句集『花源』(角川学芸出版・2011年6月)より。

高くやわらかく、しかし一本のほつれもなく結いあげられた黒髪のように、美しい句が並ぶ。中でも、雪の句に、清新な印象を受けた。「黒髪は血潮の果たて雪舞へり」「消印の蒼く雪国からの文」「また別の雪景色ある目覚めかな」「新雪を踏む兎啼くやうな音」。

 

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