故山我を芹つむ我を忘れしや   橋閒石

「我を」「芹つむ我を」の言い募りが、どうにもせつない。ふるさとの山に忘れられたように思うほど、みずからがふるさとから離れていた、その年月を思う。むかしのように、葉や風が話しかけてくれることがないのは、年を経てすこしく老いたからかもしれない。それをさみしく思うわたしは、「忘れしや」と風土へ呼びかけ、芹を摘み、過去の幸福な時間を回復しようとしている。

句集『和栲』(湯川書房・1983年1月)より。

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