背伸びして夏のてっぺんから見越す
見越し入道は、北は福島県から南は熊本県まで全国的に語られる妖怪である。僧侶の姿をしていて見上げれば見上げるほど大きくなるといい、逆に頭から足下へ目線を下げていくと消えるとか、「見越し入道、見越した」と唱えると消える、と伝えられている。狸や狐の仕業という地域もある。
草双紙ではたいてい毛深い男のろくろ首として描かれている。首が伸びて「見越す」というわけだろう。また貫禄ある見た目からか、「化け物の総大将」ということになっており、文政三年(1820)刊行の『夷歌 百鬼夜狂』にも巻頭に「見越入道」の兼題がある。
さかさまに月もにらむとみゆる哉 野寺の松のみこし入道 へつゝ東作
この本は蔦屋重三郎の呼びかけで、肝試しで百物語をやりながら狂歌百首をよむ、という企画本。それぞれ化け物にちなんだ兼題が出ており、太田蜀山人や宿屋飯盛、山東京伝ら、当時一流の狂歌人たちが腕を競っている。
「兼題」はこうした座の遊びから始まっているが、今「俳句」の名で伝統を切り捨てつつ、同じ方式で「妖怪俳句」に挑んでいるところに、矛盾と面白さを感じている。
参考.吉田幸一編『狂歌百鬼夜狂』(古典文庫、1999)