ビールないビールがない信じられない   関根誠子

暑い中、仕事を終えて、なんやかんやで家に帰ってきて、さっとシャワーを浴びて汗を流して、さあ、今日はビール飲まないとやってらんないわよ、ビールビール・・・と冷蔵庫を探ると、なんと、いつも常備してあるはずのビールが、今日に限ってきれている。「ビールないビールがない信じられない」、まさにこの言葉がそのまま口から出てきたような、そんなスムーズさがある。

「ビールない」で二段目から三段目を探り、「ビールがない」のあたりでドリンクホルダーのあたりを探り、「信じられない」のあたりでは全体をもう一度目視確認しているだろう。

言い募るその勢いが、かなしくておかしい。

ある日のわたしを見ているようである。

第二句集『浮力』(文学の森・2011年5月)より。

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