あれは夜汽車とひまはりの囁きぬ  小林苑を

ディズニーの『不思議の国のアリス』で花が色々アドバイス(というよりはおしゃべりだが)をしているのを思い出す。花達は主人公におかまいなしにしゃべり続ける。花がしゃべりだすことに、人間は関与しない。

この句も同じだろう。「あれは何?」と聞いたわけでも、疑問に思ったわけでもないが、ひまわりが囁くことによって、夜汽車に気付く。同時に、聞いたわけでもないのに、「あれは夜汽車」と教えてくれるひまわりが面白く思える。

 

「じゃぁ、あれは何?」

そう聞くと、ひまわりは再び沈黙する。

好きなようにしゃべりだし、好きなように沈黙するのだ。

 

句集『点る』(ふらんす堂 2010年)より。