蟻追つて小石掴むや女の子 江渡華子

え、なになに?蟻を追いかけたら、うまく掴めなくて、小石を掴んじゃった?ダメウーマン。飴を置いておいたらね、勝手に蟻は寄ってくるのよ。追いかけない。待つの。

……と、ブルゾンちえみにダメ出しされてしまいそうだが、その不器用さがむしろ愛おしい。

華子は今、幼い二児を育てる母として、家族を運営してゆく日々の現実の手触りを、俳句という詩型によって切り出そうと格闘している。今日の句は、まさに子どもの「あるある」。見つけた蟻を掴もうと追いかけて頑張るのだけれど、まだまだ指先も感覚も幼いので、蟻を上手につかめない。代わりに掴んだのは、小石だった。小石の隙間の影にもぐってゆく蟻まで見える。女の子の動作に焦点を絞る書き方で、暑い夏の片隅の世界をつぶさに描写した。

「ある、ある」とうなずける圧倒的なリアリティを、自分の生活の中から掴み上げてくる能力。これが、華子の俳句の特徴だろう。

2016年6月「どこを」より。