麦飯や笑顔つくりて仲直り  江渡華子

「笑顔つくりて」がホラーだ。そして圧倒的に日常だ。ということは、日常はホラーなのかもしれない。

撥音便を使わず、丁寧に文語で「つ・く・り・て」と言葉を置いた、ややぎこちないしらべが、作った笑顔のぎくしゃく感を出している。

違う人間同士、どこまでも分かり合えないことだって、ある。だから、いいたいことはあってもぐっとのみこんで、無理やり笑顔をつくることも、ある。麦飯の平熱の生活感に、理想や自我よりも生活を優先させた、私の冷静さが見え隠れして。

2016年7月「走り出す」より。