秋の夜の夫の寝息を確かむる  江渡華子

ここで、子どもの寝息ではなく、夫の寝息を確かめる華子。泥のように眠る夫、仕事で疲労困憊なのか。寝息を確かめるとは、生きていることを確かめることで、それは、生きていることを疑うことでもある。死んでしまうかもしれない、有限の存在としての夫を、かすかに意識することで、どこまでも続きそうな夜長、どこまでも続きそうな日常が、ふと、一回きりの瞬間として、静かに響き出す。

2016年9月「夫のいない部屋」より。