夏帽や誰かの他人として我  野口る理

我が主人公ではない。誰かが主人公である世界というものをる理は意識していることを感じる。それは、どの句にも共通する彼女の世界観だと思う。「私」と「それ以外」の区別をはっきりとつけることは、一見冷たいようにも見えるが、彼女は決して突き放しているわけではないということが、この十日間に挙げた句からもわかると思う。人ごみで感じる孤独感。けれど、人ごみはこの孤独感でできているのだ。そう思うと不思議と淋しくない。夏帽はつばが大きく、表情が見えづらい。彼女は淋しい顔をしているのだろうか。涼しげに笑っているのだろうか。思わず人ごみで彼女を探したくなる。

2016年7月「夢の国」より