蛇の衣まなこの皮もいちまいに  相子智恵

脱皮とはどれほど気持ちのよいものなのだろうか。一度でいいからしてみたいと、よく思う。脱皮をする生き物が、皮から抜ける瞬間や、抜けた後の少し濡れた状態を見ることも好きだ。
 
骸骨を思うからか、自分の皮をはがすことを想像すると、まなこに皮などなく、そこには穴が開いている。作者も、さぞかしまなこの皮を見たときは驚いただろう。

切れを入れないことで、この句のいちまい感をさらに強めている。
他に蛇の衣句は以下3句がある。
 
まだやはき蛇の衣なり腥し
 
蛇の衣深々と口裂けてをり
 
三日目の夢なほ蛇の衣のかたち

 
「鳥影」(『俳句 8月号』角川学芸出版)より。