なにもかもなくした手に四まいの爆死証明  松尾あつゆき

「爆死証明」という見慣れない単語。うすっぺらい紙と、失われた命を、等価と思うことができるはずがないという無言の震えが、言葉をびりびりとひびかせている。「四枚」ではなく「四まい」。おさない命、ちっぽけな命、「四枚」という単純な単位には還元したくない4人の命。「なにもかもなくした」が誇張じゃないことに愕然とする。そして、「なにもかもなくした私」ではなく、「手」。あくまで、私から見えている視野を詠んでいることで、無意識(作る意識が後ろに遠のいている)のリアルが宿った。

長崎で生まれ育ったあつゆきは、72年前の今日、原爆に遭い、妻と3人の子を奪われた。今日の句は、被爆のその年に、所属誌「層雲」に発表された句。

句集『原爆句抄 魂からしみ出る涙』(書肆侃侃房)より。