初紅葉ここにもありし渡月橋  後藤比奈夫

紅葉しはじめている庭園に、渡月橋と名のつけられた橋がかかる。渡月橋といえば京都の嵐山のものを一番に思い出すけれど、あちこちの庭園にも、同じ「渡月橋」があるのだということを、「ここにも」の語が物語っている。似ているといえばどこも似ている日本庭園の様式を「ここにもありし」とさっぱりまとめた。初紅葉とともに詠むことで、出会えたことの嬉しさに比重がかかる。

「ふらんす堂通信」154号、競詠7句より。連作の前書きによると、六義園での一句とのこと。