はじめのトムでも、おわりのクンでもなく、真ん中のヤムがまず死んでしまった。
つなぎの、要の、ヤムがいなくなったことで、解体され、ただのトムとクンになってしまった2匹も、そう遠くない未来に、この世界を去るのだろうか。それとも、はじめの名づけからは自由になって、のびのびと生きてゆくのだろうか。
トムヤムクンというアジア料理の名前を金魚につける脈絡のなさが、今っぽくておしゃれでもあるし、その楽しさがヤムの死によって突然断たれることで、読者の気持ちもぶわんぶわんと揺さぶられ、宙づりにされる。
東北若手俳人集「むじな」(2017年11月)より。