リラ嗅いでいると目が閉じ負けごこち   池田澄子

リラの香にうっとりと目を閉じて感じ入っているワンシーン。
自然に目を閉じていながら、ふっと、リラに目を閉じさせられた私、に気付く。
だからといって、すぐにカッと目を見開くようなこともせず、
「負けごこち」と流していることによって、リラの香り高さが引き立つ。
負け「ごこち」という言葉、つまり負けたのではない。
単なるリラへの服従ではなく、リラの本質を捉えてやろう、という涼しい気迫も感じられる。

『拝復』(ふらんす堂、2011.7)より。
この『拝復』の刊行記念イベントもあります。投句参加は、本日が締切のようです!