妻いねて壁も柱も月の中    飴山實

月明かりに包まれる、しんとした寝室。
中七下五のフレーズが、眠る妻の美しさを引き立たせる。
「月の中」という表現が、大づかみでありつつ丁寧で雰囲気作りが巧みだ。
「壁」や「柱」という具体的な言葉によって、家が見え、守られている「妻」が見えてくる。
妻が目覚めれば、たちまちそこに太陽が昇る思いすら感じられる。

『辛酉小雪』(邑書林、1998)より。