ラッシュアワー背中を遠い国へあずけ   四ッ谷龍

ラッシュアワーの喧騒の中というものは、どこか孤独を感じるものだ。
混雑しぎゅうぎゅうになっている車や車内、モノとしての人。
他人ばかりに囲まれ、自分の領域が狭まる中、ぼんやりと遠い国を思うのだ。
「背中」というところに不思議なリアリティを感じられる。
誰もみな、正面は、日常に疲れている自分でありつつも、「背中」はここにあらず。
上五の「ラッシュアワー」の唐突さから、
下六の「国へあずけ」とゆったり終わらせる文体も、内容と一致し気持ちがいい。

『むしめがね No.19』(むしめがね、2011.8)より。