秋の蚊の身をそばだてゝ刺しにけり   川崎展宏

蚊が血を吸うときのあの不思議に足を立てるようなポーズを思うだけで痒くなるが、
このようにサラリと詠まれると、その情景も詩となるようだ。
特に「秋の蚊」だからこそ、寒々しくも一生懸命生きている様子が見えてくる。
血を吸わせてやる優しい視線が感じられ、「秋の蚊」のあわれさが、余計に際立ってくる。

『季語別 川崎展宏句集』(ふらんす堂、2000)より。